アメリカで靴の通販業で頭角を現し、amazonの子会社となったザッポス社のCEO、トニー・シェイの著書がとても面白かったので紹介します。
ザッポスはマネジメントやマーケティングに、様々なユニークな取り組みをしているんですね。
ちょっと、一部をまとめてみます。
①「ザッポス・カルチャーブック」
ザッポスは自社のコア・バリュー(理念やビジョン)を明確化させるにあたって、「あなたにとってザッポスは何なのか」という問いで全社員にフィードバックを求めました。
他社と何が違うのか、好きな所は何なのか、という全社員の想いを(ポジティブな事もネガティブな事も)改変なく一つの本にまとめます。
この本は、社員はもちろん、メーカー、取引先、顧客も入手する事が出来るようになっていて、企業文化の強化や一体感を醸成すると共に、対外的な利害関係者に対するブランディングツールとしても活用されているんですね。
これは毎年更新され、近年は寄せられた顧客の声をも掲載しているそうです。
②社内向け月間ニュースレター「アスク・エニシング」
これは目安箱的な仕組みです。
社員から会社への業務、その他の質問を一問一答形式で毎月フィードバックするそうです。
③フェースゲーム
各社員がパソコンにログインした後、ランダムに顔写真が表示され、選択肢から正しい名前を選ぶという物。その後、顔写真の社員の経歴が表示され、社員同士の事を知ろうという取り組みです。面白いですね。
ちょっと面倒な時もあると思うけど、これを楽しめる企業文化いいなぁ。
④コールセンターでのアドボカシーマーケティング
電話での問い合わせに対し、自社で在庫がない場合、競合他社のWEBサイトを最低3社は調べ、顧客に提案する事を求めているそうです。
顧客の欲求を満たす為には、他社製品をも勧める。
一時的な利益ではなく、顧客体験にフォーカスした方針でしょうね。
なかなかここまで徹底出来ません、普通は。
⑤全社員のTwitter利用を奨励
500名に及ぶ全社員に、ザッポス社員としてTwitter利用させ、顧客との双方向コミュニケーションに取り組んでいます。
⑥メーカー営業担当者への情報提供システム
メーカーの営業担当者がザッポスの売上、在庫、収益性等の情報に直接アクセスできる仕組みを提供しているそうです。
サイト掲載内容の変更についても、ザッポスのサイト管理チームに直接進言する事を認めていて、これにより、メーカー側がより積極的にザッポスの販売に関与し、より適切なマーチャンダイジングを可能としているようです。
これらのザッポス独自のカスタマーサービスを通して、顧客のロイヤリティを高め、リピート率のアップ、口コミの醸成、ブランド構築をする事に成功しているんですね。
マネジメントやマーケティング手法がどれもユニークで面白いんだけど、そこにかつての「日本的経営」のエッセンスが含まれているのが面白い。
アメリカのバリバリの若手起業家が、様々な苦労の末、たどり着いたのが「企業文化」の重要性なんですよ。
それを顧客も、取引先も、社会をも巻き込んで波及させようと言う試みは「三方良し経営」の概念にも通じると思うのです。
日本的経営はこれから新たな形で見直されるべきだと思っています。
本書は、ザッポスの取り組み以外に、彼がベンチャーで成功するまでのストーリーや、独自の成功理論が3つの構成で書かれています。
個人的には、「読んでなんだかやる気になる本」でした。